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ライフステージから見る栄養成分

犬の成長期

1. 犬の成長期はいつまで?

犬の成長期の長さはサイズによって異なります。
超小型犬・小型犬の成長期は約8〜10ヵ月齢までですが、超大型犬の成長期は約18〜24ヵ月齢です。
大型犬になるほど成長期は長くなります。

犬の成長期

サイズごとに体重の増えぐあいや成長期間が違うため、
同じ月齢の子犬でも、小型犬と大型犬では必要な栄養バランスは異なります。
それぞれの子犬に適した栄養バランスの食事を与えることが必要です。

2. 成長期には2つの時期がある

犬の成長期は、急速に成長する生後2ヵ月までと、成長が緩やかになる生後2ヵ月以降のふたつの時期にわけて考えるべきです。
なぜなら、それらの時期によって成長速度やおもに成長する部位が異なり、必要とするエネルギー量や栄養素のバランスも異なるためです。

成長期には2つの時期がある

生後2ヵ月までは出生時の約10~15倍まで体重が増加し、主に骨組織が発達します。
その後は成犬になるまで約2~5倍体重が増加し、主に筋肉組織が発達します。
生後4~5ヵ月ごろからは脂肪組織が発達し始めるため、これ以降は肥満にならないように、エネルギー摂取量を調整しなければなりません。

3. 離乳期~生後2ヵ月までの食事

スムーズな離乳のために、授乳期の母犬と同じ内容の食事が好ましいです。
つまり、成長に必要なエネルギーを摂取するためにエネルギー密度が高く、消化性の高い食事を必要とします。
さらに、骨や筋肉などの発達に欠かせないタンパク質、骨の発達などに必要なカルシウム・リン・マグネシウムなどの
ミネラルなどを十分にバランスよく摂取することも重要です。

4. 生後2ヵ月からの食事

この時期からは成長が緩やかになるため、それまでと比べて、エネルギー摂取量をやや控えめにする必要があります。
とくに生後4~5ヵ月からは脂肪組織が発達し始めるため注意が必要です。
また、生後4ヵ月ごろから永久歯が生え始めるので、
歯の健康に配慮した成分(例:ポリリン酸ナトリウム)を含む食事であることが望まれます。

5. 成長期を通した食事

犬の成長期には、高消化性のタンパク質が不可欠です。
また、まだ未熟な消化管の健康な発育のために、乳酸菌やビフィズス菌などの腸内善玉菌を増やすとともに、
腸粘膜細胞のエネルギー源にもなるフラクトオリゴ糖、
大腸菌やサルモネラ菌などの腸内悪玉菌を減少させるマンナンオリゴ糖を摂取することも大切です。
さらに、免疫力を高めるためにβ-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、タウリンなどの
抗酸化成分を十分に摂取しなければならなりません。
抗酸化成分を十分に摂取することでワクチンを接種後の抗体産生量を高めることができるのです。

子犬におけるアデノウィルスワクチン接種後の抗体産生

6. 成長期のカルシウム摂取について

成犬の場合、カルシウムはおもにレセプターを介した能動輸送によって吸収されるため、
食事に含まれるカルシウムの量にかかわらず、ほぼ一定の量が吸収されます。
それに対して生後5ヵ月ぐらいまでの子犬の場合は、
レセプターが十分に発達しておらず、カルシウムは受動的に吸収されます。
そのため必要以上の量であっても、食事に含まれるカルシウムの約50%が吸収されてしまいます。
したがって、子犬にカルシウムを過剰に与えると必要以上にカルシウムが吸収され、
かえって骨の成長に悪影響を与えるため注意が必要です。

成犬と子犬のカルシウム吸収の違い

7. 子犬の免疫力

母犬の持っている病気への免疫抗体(抵抗力)は、ほとんどお腹の中の胎仔には移行しません。
そのため、生まれた直後の子犬は、病気に対する抵抗力が非常に弱い状態にあります。
分娩直後(16-24時間以内)の初乳を飲むことで、子犬は体内に母犬の持つ免疫抗体を取り込みます。
この抗体は次第に低下していき、子犬が自身で抗体を作る力もすぐには上昇しません。
そのため、生後4~12週齢は感染症に対してとても抵抗力の弱い時期です。
この時期はストレスを与えないようにし、母犬以外の犬との接触を控えた方が良いのです。

子犬の血中抗体濃度の変化

8. 子犬に大切な栄養成分

●骨や筋肉の発達:タンパク質
●骨の発達:カルシウム リン マグネシウム
●腸内善玉菌の増加:フラクトオリゴ糖
●腸内悪玉菌の減少:マンナンオリゴ糖
●免疫力を高める:抗酸化成分 β-カロテン ビタミンC ビタミンE ルテイン タウリン
●歯の健康:ポリリン酸ナトリウム
●脂肪の利用:L-カルニチン